タンパク質によって誘導されるiPS細胞

 とりあえず、日本語版では毎日新聞の分かりやすかったのと、英語版ながらNature newsが分かりやすかったので、そこにリンク。


 → iPS細胞:「がん化防止」ヒトでも 米、遺伝子なし作成 - 毎日jp(毎日新聞)

 → Stem-cell therapies closer to the clinic : Nature News


 従来までiPS細胞の誘導は遺伝子導入など、DNAベースによる誘導しか出来ていなかった。以下、参照(そういえば、その後ブログできちんとフォローしてないな。)


 関連→langsam : iPS細胞(人工多能性幹細胞)私的まとめ - livedoor Blog(ブログ)

 関連2→langsam : iPS細胞(人工多能性幹細胞)私的まとめ、その2 - livedoor Blog(ブログ)


 上の関連記事でも書いたが、c-Mycと呼ばれるprotooncogeneをiPS細胞の誘導に用いていることによる癌化のリスクと、ウイルス由来のベクターを使っていることによるホストの細胞のゲノム改変のリスクが、iPS細胞作製の問題点になっていた。


 ただ、何も対策をしていない訳ではなく、前者のリスクに対しては、c-Mycを使わない方法でiPS細胞を作り出すという方法が、後者に関してはplasmidベースによるiPS細胞の誘導というのが、いくつか報告されている。例えば、以下の記事が参考になるかな。


 → ウイルスベクターなしでiPS細胞 - カエル日記

 → iPS細胞がプラスミドで出来たり、2つの因子で出来たり - カエル日記


 あとは、導入後にプラスミドを除去できるという方法も開発され、今から2ヶ月ほど前にJames Thomsonのラボから報告されている。


 → Human Induced Pluripotent Stem Cells Free of Vector and Transgene Sequences -- Yu et al. 324 (5928): 797 -- Science


 しかし、これらの報告のいずれもDNAを導入するという方法によっているため、プラスミドを用いたことによる発現の安定性や癌化のリスクという問題があった。


 今回の論文はそれらの問題点を解決するためにDNAを一切導入せず、タンパク質を細胞内に導入されるように改変したものを用いている。ヒトではなく、マウスで報告されたのは1ヶ月前。


 → Cell Stem Cell - Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins


 今回のヒトの論文は基本的な内容は上の論文とほぼ同じで、違うのは使っている細胞がマウスかヒトかというだけ。


 → ScienceDirect - Cell Stem Cell : Generation of Human Induced Pluripotent Stem Cells by Direct Delivery of Reprogramming Proteins


 タンパク質の細胞内への導入には、poly-arginineの付加を用いているらしい。細胞外のタンパク質を細胞内に導入する場合、HIV tatタンパク質やpoly-arginineの付加を用いて導入することが多いが、細胞へ導入される具体的な分子メカニズムは、俺が調べた限りだといまいちよく分かっていないみたいだ。