特殊な「水素結合」というのが気になったので、ざっと調べてみた

 → タンパク質に特殊な「水素結合」創薬分野で応用期待 奈良先端大など (1/2ページ) - MSN産経ニュース


 ざっとだから、細かく検証してません。あと、元論文を探してみたんだけど、どうやらin press。論文を見ることができませんでした。

 端的に言うと、低障壁水素結合という結合を自然界で発見したと言っているのが注目を集めているのだと思います。低障壁水素結合は、日本語圏ではいい情報が見つからなかったけれど、英語圏Wikipediaによい情報があった。やっぱり、科学情報は英語圏の方が圧倒的に充実している。


 → Low-barrier hydrogen bond - Wikipedia, the free encyclopedia

A Low-barrier hydrogen bond or LBHB is a special type of hydrogen bond. This type of bond is especially strong because the distance between acceptor and donor is especially short. In regular hydrogen bonds (for example the O-H...O distance is at least 2.8 Ångström) the hydrogen ion clearly belongs to one of the heteroatoms. When the distance decreases to about 2.55 Å the proton is free to move between the two atoms (hence the low-barrier) and the LBHB forms.


 ということで、通常2.8Åの長さを持つ水素結合が、2.55Å以下の長さまで縮められた場合、低障壁水素結合と呼ばれる。この結合は水素分子の自由度が高いために反応性が高くなっているので、酵素の触媒メカニズムに利用されているのではないかと予想されている。


 → Low-barrier hydrogen bonds and enzymic catalysis -- Cleland and Kreevoy 264 (5167): 1887 -- Science


 で、今回のニュースに戻るが、この低障壁水素結合がPhotoactive Yellow Proteinというタンパク質の活性制御に重要な役割を果たしているのを明らかにしたのが、今回の記事だ。Photoactive Yellow Proteinというのは以下に分かりやすくまとまっている。どうやら、ある種の真菌の走光性に関わる光受容体らしい。


 → The Photoactive Yellow Protein (PYP) Page


 ちなみに調べる中で、今回の記事と似たような記事があったのだけど、今回の論文との違い・発展性はどこにあるのだろうか。この記事をベースにして発展したといったところか。


 → (IUCr) Crystallography Journals Online - paper details


 ざっと調べただけなんで、細かいところはフォローしてないんだけど、ひとまず低障壁水素結合(Low-barrier hydrogen bond)というものの存在とPhotoactive Yellow Proteinを知ることができただけでよかった。