世界を動かす世界戦略(石井彰・藤和彦)
- 作者: 石井彰,藤和彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/01
- メディア: 新書
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ちょっと前に極東ブログで紹介されていたので、読んでみました。
話としては若干古いが、石油のエネルギー的な側面と市場商品としての側面を分かりやすく解説してくれています。冒頭で著者が声高に主張していることに、多くの人が石油の地政学的側面が重要だと勘違いしているというのがあります。例えば、産油地の囲い込みによって、石油を独占することが国家にとって有益とする考え方がそれに挙げられますね。
こういった地政学的な石油の捉え方は、第二次大戦以前ならば成立していたんですが、現在では市場の再分配・石油枯渇時のリスク分散などの作用によって、石油がありふれた市場商品としての様相を呈しているので、地政学的に捉えることはむしろ国家などにとって損失となるそうです。例えば、仮に今に石油危機が起こった(今の原油高騰はそんなものかな?)としても、市場への影響は甚大になりますが、石油そのものの供給面では、完全に停止する程ひどくなることはほぼないらしい。だから、アメリカが中東から石油をほとんど輸入していないにもかかわらず、石油政策で中東に介入するのは、市場の安定化のために行っているそうです。
現在、石油が高騰をしていますが、それはやはり本書で著者が予言しているとおり、中国の石油輸入量の増加が主たる原因なんだろうと俺は思っています。あと、著者は中国が前時代的な地政学的側面による油田の買収を行っていること・そして中国がオイルショックを経験していないことを危惧していました。あまり詳しくないんだけど、中国における石油状況は今はどのようになっているのだろう?
最後に、今後のエネルギー政策として、石油から天然ガスへのコンバートを著者は提唱し、日本国内に天然ガス輸送のパイプラインを設立すべきとの主張をしていました。
ロシアで開発が進められていた天然ガス田の「サハリン1」から日本国内へパイプラインへの構想もあったけれど、それは利益の望まれる中国へ行ってしまった。税率も問題だけど、本質的にエネルギー対策を早いうちになんとかしないと、エネルギー的利権が持ってかれてしまうんじゃないかなぁと、本書を読んで痛感したな。