生き物をめぐる4つの「なぜ」
久々に本屋で立ち読みした新書。
端的に言えば、様々な生命現象を仕組み・目的・発達・進化という4つの観点から分析したという一冊。人が生物を観察する視点には4種類のレベルがあり、ではそれに基づいて生命現象を記述してみましょうよというのが本書の意図。この考え方のベースには、「ティンバーゲンの4つのなぜ」がある。
ちなみに、ニコ・ティンバーゲンは高校生物でも習う「イトヨの本能行動」を発見したことで有名。この業績により、1973年ノーベル医学生理学賞を受賞している。
このティンバーゲンの4つのなぜに基づいて、著者が推察を行った生命現象は以下。Amazonの目次から引用する。
はじめに 四つの「なぜ?」ということ
第1章 雄と雌
第2章 鳥のさえずり
第3章 鳥の渡り
第4章 光る動物
第5章 親による子の世話
第6章 角と牙
第7章 人間の道徳性
詳しい事象の説明は本書に譲る。ただ、ここではちょっと感心したことについて、一例を交えつつ感想でも。
俺は、こういった生命現象を自分のバックグラウンドからか、どうしても分子生物学的視点から観察してしまいがちになる。ディンバーゲンの4つのなぞで言うところの至近要因というやつだ。なので、集団生物学や生態学といった視点(究極要因)が欠けていることが多い。
例えば、第4章「光る動物」で、ホタルイカの例が出てくる。ホタルイカが光るメカニズムはルシフェリンの分解によるL-L発光というのは厳密に理解している(つもりだ)が、なぜホタルイカが光るのかという理由については、これまで俺はてっきり生殖行動の一種ではないのかと勘違いしていた。しかし、違うらしい。実は外敵から身を守るためだというのを読み、ほぉと思った。光ったら、かえって目立つのではないかと思っていたんだが、どうもそうではなくカモフラージュとして働くようだ。
こういったように、本書では生命現象を多角的な視点から見るということに立脚して、様々な議論が進んでいく。最後に人間の道徳性への議論を進めていくのは若干やりすぎではないかとも思ったんだけれど、総じて言えば、生物学的視点・考え方を身につけるのにふさわしい本だと思った。
特に、ティンバーゲンの4つのなぜを分かりやすく説明した本としては間違いなく良著です。この本は高校生ぐらいで生物を学んでいる人が一番ふさわしいのかもしれない。