今更ながら、ポスドクの話

 産経に激しく今更な話が出ていた。


 → ブームだったのに… 「バイオポスドク」に受難の季節 (1/3ページ) - MSN産経ニュース


 この記事は終始、責任転嫁が見られる酷いもので、今更なぜこの話題がニュースになるのか、俺には疑問に思えて仕方ありません。

 確かに、この記事に出てくる研究者さんが研究者を志した90年代後半から2000年頃まではヒトゲノム解析など革新的な業績が多く出ていた時期で、マスコミや政治などもバイオテクノロジーに注目するぐらい「バイオブーム」といっても過言じゃない時期だったと思います。俺自身、分子生物学研究に興味を持ったのは、ちょうどその頃で、ブームの高揚感を直に感じていました。


 でも、研究者とはブームだから志す者でしょうか?


 そもそも、研究者は芸能人や芸術家と同じぐらい狭き門であり、相当な努力をした末になれるかどうかの大変な職業です。よく言いましたよね。「末は博士か大臣か」って。

 もっとも、旧文部省による大学院政策が今日の現状を招いた一番の要因なんですが、それ以上の難点は生物学の博士号が比較的簡単に取れてしまうことなのかもしれません。生物学に関する限り、研究者としての才能がそれほどなくとも指導教官の言うことを素直にやっていれば、博士号が取れてしまうことが往々にしてあります。そういった学問の環境がアカデミック・ハラスメントなどへと繋がっている複雑な問題でもあるのですが。


 また、記事でも挙げているバイオポスドクは確かに余剰なほど人がいますが、逆に工学系の博士などは不足しており、仮に理系に限ったとしても、どの分野でも博士が多いというわけではないのです。そこら辺の現状を、産経新聞の記者は分かっているんでしょうかねぇ。


 っていうか、この類のネタは8ヶ月ぐらい前にもはてなで話題になったというのに。ネットのネタって絶えず繰り返されているんだな。