平野啓一郎著「葬送」

 

葬送 第一部(上) (新潮文庫)

葬送 第一部(上) (新潮文庫)


 正月休みの時に読んでた本。読み終わった時に感想を書こうかなと途中までブログに書いたんだけど、結局書き上げず・・・というか話がまとまりきらずに、途中で投げ出してました。せっかくブログ復帰したことだし、ちょっと書いてみるか。


 ストーリーは18世紀のパリを舞台に、ドラクロワショパンの2人に焦点を当てて、その周りの人間関係を中心に話が進んでいくものになってます。

 著者の平野啓一郎さんの作品を読んだのは、あのデビュー作で話題を騒然とさせた「日蝕」以来の2作目。たしか、「日蝕」を読んだ時は俺、高校生だったな。あの「日蝕」は正直気分を沈められること、この上ない作品だったので、(ある意味)忘れられないぐらい印象的な作品でしたね〜。


 この「葬送」も「日蝕」と同様に独特の読後感を感じました。平野氏はなんでこんな作品を書いたんだろう、いや書けるんだろう。

 再読する気にはちょっとまだなれないが、この作品は再読することで、より価値が出てくる作品なんだろうと思った。読みながら、それを感じたし、読み終わってしばらくたった今でも、それを強く感じます。

 また、作中に頻繁にでてくる、ショパンドラクロワの口から語られる「芸術論」はとにかく秀逸。鳥肌ものでした。平野氏の事前の下調べの入念さ、そして才能がうかがえます。この俺と大差ない年齢の人間が18世紀のパリの社交界を描く・・・。いったいこの作品を書いた時の平野氏の精神状態はどんな感じだったのか。それが不思議でたまりません。きっと、この作品を書いた時には、現実と18世紀の2つの時間が流れてたんでしょうね。


 原稿用紙2500枚の超大作。「読んでみてください」と気軽に薦められるような本じゃないが、読んでみる価値のある作品ですよ。ま、本は人の好みもあるので絶対とはいえませんけどね。